自由粒子のFeynman核 経路積分ver.

日々思うこと

以前自由粒子のFeynman核の計算をした(該当記事はコチラ)。
この時は系のHamiltonian演算子を(自由粒子とか調和振動子とか)決めて、運動量の完全系を挿入したりしてFeynman核の具体的な形を求めた。
[系のHamiltonianを決める]

[時間発展演算子を位置の基底で挟む=Feynman核]

[運動量の完全系を挿入、運動量演算子をc-数に戻す]

[運動量積分を行なう]
これが従来のやり方だが、経路積分のformalismでは表式から演算子のexplicitな形を取り除いて汎関数(作用)の無限重積分としてFeynman核を扱うことができる(経路積分の記事はコチラ)。もちろん得られる結果は経路積分を使おうがダイレクトにHamiltonianを入れて計算しようが変わらないが、この記事では経路積分で自由粒子のFeynman核を計算してみる。
先に従来のやり方との違いがわかるように上とおなしように経路積分での計算のフローチャートを書いておく。
[系のLagrangianを決める]

[空間の各点に関して積分、N-1回繰り返す]
この2ステップ。自由粒子のLagrangianは
$$L=\frac{1}{2}m\dot{x}^2$$
であるからこれを経路積分の表式に代入すると
$$\begin{align}K(t_f, x_f;t_i,x_i)&=\lim_{\epsilon\to0,N\to\infty}\sqrt{\frac{m}{2\pi i\hbar\epsilon}}\int\prod_{j=1}^{N-1}\sqrt{\frac{m}{2\pi i\hbar\epsilon}}dx_je^{\frac{i}{\hbar}\epsilon\sum_{i=1}^{N}\frac{m}{2}\left(\frac{x_i-x_{i-1}}{\epsilon}\right)^2}\\ &=\lim_{\epsilon\to0,N\to\infty}\sqrt{\frac{m}{2\pi i\hbar\epsilon}}\int\mathscr{D}y\left(\frac{2\hbar\epsilon}{m}\right)^\frac{N-1}{2}e^{i\sum_{i=1}^{N}\left(y_i-y_{i-1}\right)^2}\end{align}$$
ここで\(y_i\equiv\sqrt{\frac{m}{2\hbar\epsilon}}x_i\)、また\(\mathscr{D}y\equiv\lim_{\epsilon\to0,N\to\infty}\prod_{j=1}^{N-1}\sqrt{\frac{m}{2\pi i\hbar\epsilon}}dy_j\)とした。
これでN-1重Gauss積分をすれば良いだけになった。ここからの計算は実際に\(j=1,2\cdots\)と計算してみながらその傾向を掴むことを試みてみよう。
まずは\(j=1\)の場合。
$$\begin{align}\int dy_1 e^{i\left(\left(y_1-y_0\right)^2+\left(y_2-y_1\right)^2\right)}&=\int dy_1 e^{i\cdot 2 \left(y_1-\frac{y_0+y_2}{2}\right)^2}e^{\frac{1}{2}i\left(y_0-y_2\right)^2}\\ &=\sqrt{\frac{i\pi}{2}}e^{\frac{i}{2}\left(y_0-y_2\right)^2}\end{align}$$
次に\(j=2\)の場合をみてみる。
$$\begin{align}\int dy_1dy_2e^{i\left(\left(y_1-y_0\right)^2+\left(y_2-y_1\right)^2+\left(y_3-y_2\right)^2\right)}&=\sqrt{\frac{i\pi}{2}}\int dy_1e^{\frac{i}{2}\left(y_0-y_2\right)^2+i\left(y_3-y_2\right)^2}\\ &=\sqrt{\frac{i\pi}{2}}\int dy_2e^{i\frac{3}{2}\left(y_2-\frac{y_0+2y_3}{3}\right)^2}e^{\frac{i}{3}\left(y_0-y_3\right)^2}\\ &=\sqrt{\frac{i\pi}{2}}\sqrt{\frac{2i\pi}{3}}e^{\frac{i}{3}\left(y_0-y_3\right)^2}=\sqrt{\frac{\left(i\pi\right)^2}{3}}e^{\frac{i}{3}\left(y_0-y_3\right)^2}\end{align}$$
ここまでくると大体パターンが予測できる。なのでN-1重積分は以下のようになるだろう(納得できなければ帰納法を使って証明してみてください)。
$$\int dy_1\cdots dy_{N-1}e^{i\sum_{i=1}^{N}\left(y_i-y_{i-1}\right)^2}=\sqrt{\frac{\left(i\pi\right)^{N-1}}{N}}e^{\frac{i}{N}\left(y_N-y_0\right)^2}$$
ここまできたらFeynman核のevaluationは終わったも同然。結果は
$$\begin{align}K\left(t_f,x_f;t_i,x_i\right)&=\lim_{\epsilon\to 0,N\to\infty}\sqrt{\frac{m}{2\pi i\hbar\epsilon}}\sqrt{\frac{m}{2\pi i\hbar\epsilon}}^{N-1}\sqrt{\frac{\left(i\pi\right)^{N-1}}{N}}e^{\frac{i}{N}\left(y_N-y_0\right)^2}\\ &=\lim_{\epsilon\to 0,N\to\infty}\sqrt{\frac{m}{2\pi i\hbar N\epsilon}}e^{\frac{im}{2\hbar N\epsilon}\left(x_f-x_i\right)^2}\\ &=\sqrt{\frac{m}{2\pi i\hbar T}}exp\left(\frac{im}{2\hbar}\frac{\left(x_f-x_i\right)^2}{T}\right)\end{align}$$
最後の行では始状態の時刻\(t_i\)と終状態の時刻\(t_f\)を\(\epsilon\)の幅で\(N\)等分していたので\(T\equiv t_f-t_i=N\epsilon\)を使った。
これは以前計算した結果と同じものである。また以前みたようにFeynman核はそれ自体がSchrödinger方程式を満たしており、波動関数の時間発展に
$$\psi\left(t_f,x_f\right)=\int dx_iK\left(t_f,x_f;t_i,x_i\right)\psi\left(t_i,x_i\right)$$
の形で寄与している。これは時刻\(t_i\)での波動関数の空間各点\(x_i\)でweight\(K\left(t_f,x_f;t_i,x_i\right)\)で素元波を作りその重ね合わせ(積分)が次の時刻\(t_f\)での波動関数を作るという形でHuygensの原理を体現している。
このように経路積分を使ってFeynman核を計算することもできるし、今後Feynman diagramを描くときのルールになるFeynman ruleの導出をする際には時間発展演算子のなかのHamiltonianに摂動hamiltonianを加えてそのベキでひたすら展開する方法もあるが、この方法ではもちろんFeynman核を各orderで計算できるし、その結果からFeynman ruleを”読み取る”ことはできるが、自然なFeynman ruleの導出はできない。より自然なFeynman ruleの導出(いわゆる親公式というもの)には経路積分の処方(とSourceの導入)を用いるのがいいと思う。

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素粒子兄弟
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素粒子物理学を研究しています。
物理学を「面白い学問」で終わらせないこと、そこから「人生のなかで核心となる精神」を学んで生きることが僕の哲学です。

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