量子場と波動関数の違い

日々思うこと

$$\def\bra#1{\mathinner{\left\langle{#1}\right|}}$$ $$\def\ket#1{\mathinner{\left|{#1}\right\rangle}}$$ $$\def\braket#1#2{\mathinner{\left\langle{#1}\middle|#2\right\rangle}}$$

最近twitterの物理界隈では「波動関数と量子場を混同している人が多い」ということが話題になった。
堀田さん(@hottaqu)のtweetでは物理を専門で学んだことのある人の1/4が波動関数と量子場は同じものであると思っている人がいることがアンケートによってわかったとのことだった。
そこで波動関数と量子場は異なるものであることを体験できる問題を堀田さんが用意してくださっていたので僕も解いてみた。
大体合っていると思いますが、間違いがあったら許してください /(- -)/


Q1. 非相対論的量子場を\(\Psi(x)\)を考える。この\(\Psi(x)\)にbosonicな正準量子化\([\Psi(x),\Psi^{\dagger}(x’)]=\delta(x-x’)\,\,\,[\Psi(x),\Psi(x’)]=0\)を課す。
また量子場\(\Psi(x)\)のHeisenberg描像は系のHamiltonianを
$$H=\int dx\Psi^{\dagger}(x)\left(-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{\partial^2}{\partial x^2}+V(x)\right)\Psi(x)$$
で与えると\(\Psi(t,x)\equiv e^{+\frac{i}{\hbar}Ht}\Psi(x)e^{-\frac{i}{\hbar}Ht}\)で定義される。
このとき量子場\(\Psi(x)\)は次のSchrödinger方程式を満たすことを示せ。
$$i\hbar\frac{\partial}{\partial t}\Psi(t,x)=\left(-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{\partial^2}{\partial x^2}+V(x)\right)\Psi(t,x)$$

A. 量子場\(\Psi(t,x)\)はHeisenberg方程式によって時間発展をする:
$$\begin{align}i\hbar\frac{\partial}{\partial t}\Psi(t,x)&=\left[\Psi(t,x),H\right]\\ &=e^{+\frac{i}{\hbar}Ht}\left[\Psi(x),H\right]e^{-\frac{i}{\hbar}Ht}\end{align}$$
ここで\(\left[\Psi(x),H\right]\)は
$$\begin{align}\left[\Psi(x),H\right]&=\int dx’\left[\Psi(x),\Psi^{\dagger}(x’)\left(-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{\partial^2}{\partial x^2}+V(x)\right)\Psi(x’)\right]\\ &=\int dx’\left(-\frac{\hbar^2}{2m}\left[\Psi(x),\Psi^{\dagger}(x’)\frac{\partial^2}{\partial x’^2}\Psi(x’)\right]+V(x’)\left[\Psi(x),\Psi^{\dagger}(x’)\Psi(x’)\right]\right)\\ &=\int dx\left(-\frac{\hbar^2}{2m}\left[\Psi(x),\Psi^{\dagger}(x’)\right]\frac{\partial^2}{\partial x’^2}\Psi(x’)+V(x’)\left[\Psi(x),\Psi^{\dagger}(x’)\right]\Psi(x’)\right)\\ &=\left(-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{\partial^2}{\partial x^2}+V(x)\right)\Psi(x)\\ &∴i\hbar\frac{\partial}{\partial t}\Psi(t,x)=e^{+\frac{i}{\hbar}Ht}\left(-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{\partial^2}{\partial x^2}+V(x)\right)\Psi(x)e^{-\frac{i}{\hbar}Ht}\end{align}$$
右辺は時間発展演算子でSandwitchされているが、可換性を気にしなければいけないのは量子場\(\Psi(x)\)と\(\Psi^{\dagger}(x)\)を含む項どうしである。
そのため時間発展演算子\(e^{+\frac{i}{\hbar}Ht}\)は\(\left(-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{\partial^2}{\partial x^2}+V(x)\right)\)を乗り越えることができる。結果として次のような方程式が満たされる。
$$i\hbar\frac{\partial}{\partial t}\Psi(t,x)=\left(-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{\partial^2}{\partial x^2}+V(x)\right)\Psi(t,x)$$


Q2. 量子場\(\Psi(x)\)における真空状態は\(\Psi(x)\ket{0}=0\)で定義される。
1粒子が\(x\)の位置に局在する状態(1粒子状態)は\(\ket{x}\equiv\Psi^{\dagger}(x)\ket{0}\)で定義される。
このとき\(\braket{x}{x’}=\delta(x-x’)\)が成立することを示せ。

A. 真空状態\(\ket{0}\)でSandwitchされているOperatorは真空の定義から\(\Psi(x)\)と\(\Psi^{\dagger}(x)\)との交換関係に置き換わる。
$$\begin{align}\braket{x}{x’}&=\bra{0}\Psi(x)\Psi^{\dagger}(x’)\ket{0}\\ &=\bra{0}\left[\Psi(x),\Psi^{\dagger}(x’)\right]\ket{0}\\ &=\delta(x-x’)\end{align}$$


Q3. 量子場\(\Psi(x)\)におけるGreen関数は\(G\left(t,x,x’\right)\equiv\bra{0}\Psi(x)\Psi^{\dagger}(x’)\ket{0}\)で定義される。
このとき\(G\left(0,x,x’\right)=\delta(x-x’)\)が成立することを示せ。
またこのGreen関数は量子場\(\Psi(x)\)と同じSchrödinger方程式を満たすことを示せ。

A. 時刻0で位置\(x’\)に局在した1粒子状態\(\ket{x’}\)と時刻\(t\)で位置\(x\)に局在した1粒子状態\(\ket{t,x}\)との内積(遷移振幅)をGreen関数と定義している。
$$\begin{align}i\hbar\frac{\partial}{\partial t}G\left(t,x,x’\right)&=\bra{0}\left(i\hbar\frac{\partial}{\partial t}\Psi(t,x)\right)\Psi^{\dagger}(x’)\ket{0}\\ &=\bra{0}\left(-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{\partial^2}{\partial x^2}+V(x)\right)\Psi(t,x)\Psi^{\dagger}(x’)\ket{0}\\ &=\left(-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{\partial^2}{\partial x^2}+V(x)\right)\bra{0}\Psi(t,x)\Psi^{\dagger}(x’)\ket{0}\\ &=\left(-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{\partial^2}{\partial x^2}+V(x)\right)G\left(t,x,x’\right)\end{align}$$


Q4. 1粒子を記述する波動関数に対応する量子状態\(\ket{\psi}\)を量子場\(\Psi(x)\)を用いて
$$\ket{\psi}\equiv\int dx\psi(x)\Psi^{\dagger}(x)\ket{0}$$
で定義する。
\(\braket{x}{\psi}=\psi(x)\)となることを示せ。

A. 量子状態\(\ket{\psi}\)は時刻0において\(-\infty\)〜\(+\infty\)にわたって1粒子状態\(\Psi^{\dagger}(x)\ket{0}\)をweightをつけて重ね合わせした状態になっている。
量子場\(\Psi(x)\)によって生成される1粒子状態\(\ket{x}\)と量子状態\(\ket{\psi}\)との内積をとると位置\(x\)に局在するような1粒子状態のweight\(\psi(x)\)を取り出すことができる。
$$\begin{align}\braket{x}{\psi}&=\bra{0}\Psi(x)\int dx’\psi(x’)\Psi^{\dagger}(x’)\ket{0}\\ &=\int dx’\psi(x’)\bra{0}\Psi(x)\Psi^{\dagger}(x’)\ket{0}\\ &=\int dx’\psi(x’)G\left(0,x,x’\right)\\ &=\int dx’\psi(x’)\delta(x-x’)=\psi(x)\end{align}$$


Q5. Schrödinger方程式と初期条件\(\psi(0,x)=\psi(x)\)を満たす一般時刻での波動関数\(\psi(t,x)\)は量子場\(\Psi(x)\)を用いて
$$\psi(t,x)=\bra{0}\Psi(t,x)\int dx’\psi(x’)\Psi^{\dagger}(x’)\ket{0}$$
で与えられることを示せ。

A. 量子場\(\Psi(t,x)\)のみたすSchrödinger方程式の右から量子状態\(\ket{\psi}\)を、左から真空\(\bra{0}\)を作用させる。
$$i\hbar\frac{\partial}{\partial t}\bra{0}\Psi(t,x)\ket{\psi}=\left(-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{\partial^2}{\partial x^2}+V(x)\right)\bra{0}\Psi(t,x)\ket{\psi}$$
\(\bra{0}\Psi(t,x)\ket{\psi}\)もまたSchrödinger方程式を満たすが、これに対して\(t=0\)ととったものは
$$\begin{align}\bra{0}\Psi(0,x)\ket{\psi}&=\bra{0}\Psi(0,x)\int dx’\psi(x’)\Psi^{\dagger}(x’)\ket{0}\\ &=\int dx’\psi(x’)\bra{0}\Psi(x)\Psi^{\dagger}(x’)\ket{0}\\ &=\int dx’\psi(x’)G(0,x,x’)\\ &=\int dx’\psi(x’)\delta(x-x’)=\psi(x)\end{align}$$
となり初期時刻で\(\psi(x)\)と等しくなる。つまり\(\bra{0}\Psi(t,x)\ket{\psi}\)は一般時刻での波動関数\(\psi(t,x)\)とみなせる。


これで量子場と波動関数は異なるものであることがわかった。
感覚としては量子場がより根本的なものであって、これにより生成される(一般には)多粒子状態を重ね合わせて構成された量子状態の各weightを位置に対してプロットするとそれが(位置表示の)波動関数になる、と言ったところだろうか。
僕が学部生で量子力学を学び始めたとき量子状態\(\ket{\psi}\)に\(\bra{x}\)を作用させると波動関数になるよ、と教わったもののこの2つのベクトルはどこから出てきて各々どういう立ち位置なのかが釈然としなかった。
今回のように量子場(場の方程式としてSchrödinger方程式を満たす)を使うとこの辺の立ち回りがよりすっきりと理解できそう。

投稿者プロフィール

素粒子兄弟
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東北大で素粒子物理学を研究しています。
物理学を「面白い学問」で終わらせないこと、そこから「人生のなかで核心となる精神」を学んで生きることが僕の哲学です。

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