光のDoppler効果 ー高校生のときの思い出ー

日々思うこと

今回は僕の高校生の時のお話をします。
当時高校3年で大学も決まっていて、入学手続きをしながら自分の好きな物理を気ままにやったりしていました。
そんなある時ふと思ったのが
「音波のDoppler効果は教科書でやった。
でも、Doppler効果は(縦波・横波関係なく)一般の波の現象であるならどうして光のDoppler効果については教科書に言及がないのか?
ということです。

Doppler効果とは一言で言えば観測者によって音源が発する音波の振動数が変わるというもの。
救急車のサイレンは救急車に乗っていれば別段変に聞こえませんが、
走っている救急車を路上から見るとサイレンの音は近づくほど低くなります。
音の高低は音波の振動数によるものですから、これがDoppler効果です。
光というのは光速で伝播する電磁波であることは高校生の僕も知っていました。
だから光にもDoppler効果があるはずで、
観測者によって振動数が変わるということは光の色がある人は赤に見えるのに、また別の人にとっては青に見えるみたいなことが起こるんじゃないか?!と思ったのです。
“光”というオブジェクトは一緒なのに観測者によってその色が変わる、これはかなり面白い現象なのにどうして教科書にないんだ…!と思い
自分で研究してみました。

その時高校の物理の先生に見せたら面白いと思うはずだと思って計算をしました。
しかし、自分が面白いと思う現象つまりある人にとって青い光(波長〜380nm)がまた別の人には赤い光(波長〜750nm)に見えるためには
相対速度が光速の50%程度でなければいけないという結果が出ました。
ここで使った式は教科書にあったDoppler効果の式$$f’=\frac{V-v_o}{V-v_s}f$$を使いました。
(\(V\):音速    \(v_o\):観測者の速度     \(v_s\):音源の速度     \(f\):音源が静止している時の音波の振動数     \(f’\):観測者にとっての振動数)
ここで\(V\)は音速なのでここを光速\(c\)に置き換え、\(f=c/(380\times 10^{-9})\)、\(f’=c/(750\times 10^{-9})\)で計算をしてみたらそうなりました。
こういう置き換えをしていいのかどうか、当時の僕には分別できませんでしたがとにかく僕はその結果をみてがっかりしました。
これまで人類が生み出してきた乗り物の中で最も速いのはGoogle先生によると7000km/h程度、光速の50%程度には到底及ばず、私たちはこの興味深い現象を見ることができないと思ったからです。

結局入学手続きや引越しの準備で高校に足を運ぶことはできず、計算結果を物理の先生に見せることは叶いませんでした。
そして大学に入ってから専門的に物理学を学んできましたが、特殊相対性理論の本を自分で読んでいる時に僕は再び光のDoppler効果に出会いました。
特殊相対性理論は光速に近い速さで運動する系の物理を説明します。
高校の教科書に載っているDoppler効果及び波動の話は全て非相対論的なNewton力学に基づくものです。
なので光の伝播とそのDoppler効果を考えるためには特殊相対性理論に基づいたDoppler効果を考えないといけなかったのです。
ここではその詳細な議論はしません(やる気が出たら載せます)が、相対論的に拡張されたDoppler効果は以下のようになります:$$f’=f\sqrt{\frac{1+\beta}{1-\beta}}$$これは光源が観測者に近づいてくる場合で\(f’\)は\(f\)よりも大きくなります。逆に光源が遠ざかっていく場合には\(\beta\,→\,-\beta\)と置き換えるだけです。
特殊相対論及びDoppler効果の議論は個人的には高原さんの特殊相対性理論(培風館)を参考にしていただくのがオススメです。

高校生の頃素朴に抱いた疑問がより高度な物理に繋がったという意味で貴重な経験でした。
高校の物理の内容から
「あれとこれをくっつけるとどうなるんだろう?」
「この法則は一体どこからきてるんだろう?本質はなんだろう?」
と考えていくことでテストの点数云々よりももっと深い物理の世界をみれるのです。
ぜひ皆さんも知ってる法則を“ひとひねり”してみてください!

投稿者プロフィール

素粒子兄弟
素粒子兄弟
東北大で素粒子物理学を研究しています。
物理学を「面白い学問」で終わらせないこと、そこから「人生のなかで核心となる精神」を学んで生きることが僕の哲学です。

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