この宇宙はどれほど”美しく”創造されたか

日々思うこと

先週、牧師先生が

「この宇宙、地球がどれほど貴重なものか。
神様はその全知全能さを持ってしても宇宙を創るのに137億年、地球を創るのに45億年かかるくらい苦労なさった。
それ以上に人間を創るのに苦労なさった。だからあなたたちの体はどれほど貴重だろうか。」

と話されたこともあり、教会内のトークルームではいつもよりScientificな会話が多く交わされていました。
僕の専門は素粒子物理なのでどちらかというと職業柄地球とか、そういうマクロなものよりも例えば水素とか、陽子とか、はたまた素粒子とか
そういうミクロなモノに目がいってしまいます。
だから正直地球を創造するのにどれほど苦労したか、と言われてもあまり実感が湧きません(- -)

じゃあ水素(周期表の一番最初の元素)とか、電子とかそういう素粒子だったら話は単純か、というともちろんそうではありません。
なので今回は僕が話せる範囲から牧師先生が話された御言葉をみてみようと思います。

現在物理学者たちはこの世界には最小の構成要素があるということを確信しています。
それが素粒子です。
素粒子と一言に言っても物質を構成するフェルミオン(スピンが1/2の粒子)、
その物質粒子の間を媒介して相互作用を生み出すボゾン(スピンが1の粒子)などいろいろあります。
そして素粒子物理学には標準模型というものがあり、素粒子をいくつ用意したらこの宇宙を創ることができる、というレシピみたいなものがあります。
もちろんこの標準模型自体まだ完全でなく多くの問題を抱えており、実はまだまだみたことのない素粒子もあるかも知れません。
ですが、現在標準模型内に組み込まれている電子やニュートリノ、クォークといった素粒子は実験的にも確認されており、
実際にそれらの素粒子無くしてこの宇宙は存在できません。

ではこれらの素粒子を”物理”としてつまり数式を使ってその性質等々説明しようと思うとどうなるでしょうか。
「この宇宙を創るためにはいくつ素粒子が必要で、それらをどう組み合わせたらいいのか」という宇宙のレシピとなる数式はだいたいこんな感じです。
$$\begin{align}\mathscr{L}&=\sum_{\psi}\overline{\psi}i\gamma^{\mu}D_{\mu}\psi\\&-\frac{1}{4}B_{\mu\nu}B^{\mu\nu}\\&-\frac{1}{4}W_{\mu\nu}W^{\mu\nu}\\&-\frac{1}{4}G_{\mu\nu}G^{\mu\nu}\\&-\frac{1}{2}|D\Phi|^2-V\left(\Phi\right)+y_{ij}\psi_i\Phi\psi_j\end{align}$$
わかる人もいればそうでない人もいると思いますが、この\(\mathscr{L}\)という量はLagrangianと呼ばれ、
これが素粒子たちの振る舞い(Dynamics)を完全に決めています。

これだけです。
他に要らないんです。

このLagrangianはLorentz対称性・局所ゲージ対称性といった自然万物が持つべき対称性
両辺のとるべき質量次元(単位)が揃うように各項を構成、
あとは諸々の理論が正当になるための条件(繰り込み可能性etc・・・)
といったことを要請することでその形はほとんど決まってしまいます。
両辺で単位を揃えるのは常識だと思えばLagragian、つまり宇宙のレシピは自然万物が持つべき対称性を決めることであらかた定まってしまうのです。

素粒子ひとつぶを理解するのにこう言った対称性とか、何やら深淵なものが絡んでくるのですから、
その素粒子から作られる地球や人間はどうか
。想像もつきません。(マクロな系とか多体系とか大変そうなイメージしかないのです)


またもう一個別な話をすると、量子力学で厳密に解くことができる系というのは限られています。
井戸型ポテンシャルとか、調和振動子ポテンシャルとか、ポテンシャルの取り方が肝なのですが解析的に解ける例としてCoulombポテンシャルがあります。
これは簡単にいうと水素原子の系です。
つまり水素原子は量子力学で厳密にその波動関数(〜状態)とエネルギーが計算されます。
しかし、困ったことに原子番号を1個あげたヘリウム原子は厳密に解けない(らしい)のです。
実際に確認したわけではありませんが、とにかく物理はこういった極端にシンプルな系が厳密に解けても
そこからちょっとズレるだけで数値的にしか解けなくなってしまうのです。

水素原子とか、そういうものでも波動関数はめちゃくちゃ複雑です。
Legendre多項式とかそういう複雑な多項式とか微分方程式を知らないといけません。
しかし、ものは考えようです。
水素原子ですらこんなに神様は作り込まれたのですから、私たちの住む地球、そして私たちの体はどんなに神経を使って作られたのか。

全知全能さを持ってしても137億年かけて神様がようやくみたかった景色が今あるわけです。
今ご時世的にもいろんなことを考え直すことが多いと思います。
自然万物を通して”自分の貴重さ”を感じて見るのもいいかと思います・・・!

ちなみに摂理のブログで同じように生物学の観点でいろいろ書いてる記事もあったので
ぜひそちらもご覧ください。MiKさんという方の記事です:
https://setsuriwomen.com/2020/04/27/9782

投稿者プロフィール

素粒子兄弟
素粒子兄弟
東北大で素粒子物理学を研究しています。
物理学を「面白い学問」で終わらせないこと、そこから「人生のなかで核心となる精神」を学んで生きることが僕の哲学です。

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