2つで1つの物理法則

日々思うこと

前回の記事のなかでこの世界は対で存在するものが多く、また物理学ではこれらを統一させた時に大きな発見が生まれたということを話しました。
前回は相対性理論について主に話しましたが今回はもう少しいろんな理論に視野を広げてみたいと思います。

まず有名なところで言えば物理と言えばNewton。
「Newtonは木からりんごが落ちるのをみて万有引力を発見した」
という話で彼を覚えている人も多いはず。しかし、これには少し語弊があります。
「木からりんごが落ちるのをみて万有引力が存在する」ということを思いつく彼の”発想力”がすごいのではなく、
目の前で起きた「りんごが木から落ちる」という現象と「地球の周りを月が回っている」という現象はどちらも同じ万有引力という力で起きる現象であるということを明らかになったことがすごいのです(そもそもりんごが落ちるのをみて万有引力を発見したわけではないです)。
言い換えると、地上での現象(りんご-地球)と天体間の現象(地球-月)を万有引力という1つの力で説明したということが彼の発見の凄さなのです。

話題を変えましょう。この世界には大きく4つの力が存在すると言われていますがそのなかで電磁気力は私たちの生活に密着したものだと言えます。
今や電気がなければ人々の生活はたちまち立ち行かなくなってしまいます。
車はタイヤと道路の間に摩擦力が生じるために走ることができますが、摩擦力も細かくみてみると結局は分子間に働く電磁気力がきっかけです。
このように電磁気力の理解、言い換えると電磁気学は人類の文明の進歩に言い尽くせないほどの恩恵をもたらしてきました。
電磁気学で扱われる対象は電場・磁場です。
しかし電磁気学の基本方程式であるMaxwell方程式をみてみると電場と磁場は混ざっており2つの場として扱うよりも”電磁場”という1つの物理的な場として扱うのが本質的だということがわかりました。
さて、こうして電場と磁場を統一した時に何が起きたのか。
それは「光が電磁波である」ということが明らかになったということです。
電磁波もまた私たちの身の回りに溢れています。
太陽から降り注がれる紫外線しかり、スマホやパソコンから発せられる電波しかり、電子レンジもマイクロ波という数m〜数100m程度の波長を持つ電磁波のおかげで使うことができます。
これらが光であるということは電磁波は光速(30万km/秒)で伝播するということなのです。
電気磁気の統一は光・電磁波の性質を理解し、さらに特殊相対性理論へとつながる重要な科学の一歩だったのです。

また別の話に移りましょう。古典力学では粒子と波というのはそれぞれ異なる描像を持った物理的実体だと考えられています。
前者は局所的に存在しており、後者は広がりを持って存在しています。
粒子は2つを反対向きに転がすとビリヤードの球のようにぶつかって散乱しますが、反対向きに伝わる波は互いに重なり合ってそのあとすり抜けてしまいます。このように粒子と波という2つの描像は異なった性質を持ったもの同士です。
しかし物理学が発展していくと黒体輻射、光電効果、Compton効果、さらには電子の2重スリット実験からミクロな粒子は波の性質を持っていることがわかってきました。
つまり私たちが暮らしている比較的マクロな世界では見えなかった、波と粒子の2重性をミクロの世界では考えないといけなくなり量子力学という学問が誕生したのです。
当初は「波の性質を持つ粒子」言い換えると「”広がり”を持って存在する粒子」という概念の理解に物理学者たちは頭を悩ませましたが、
「この世界の物質は実は局在して存在するものはなくて、全て確率的に広がりを持って存在しているのだ」
というCopenhagen解釈が認められるようになりました。
このように粒子という異なる性質を統一したことで人類が今までみたことがないミクロな世界を忠実に説明できる理論を知るようになったのです。

このように対で存在する概念の統一は大きな発見と自然万物に対するさらなる根本的な疑問を生み出し、科学の進展を力強く推し進めてきました。
ただ対で存在するだけは簡単だけど、それを統一するのが大変。だけどその先にはみたことがない世界が待っている。
これは”物理の理論”で終わらせるにはもったいない「学び」だと思います。
興味深いで終わらない、物理学を通して日々の生活にフィードバックできる学びを得ることが大切なことです。
何かにチャレンジする時、となりの人を誘って一緒にやってみたら?
今までなかったようなことが起きるかも。

投稿者プロフィール

素粒子兄弟
素粒子兄弟
素粒子物理学を研究しています。
物理学を「面白い学問」で終わらせないこと、そこから「人生のなかで核心となる精神」を学んで生きることが僕の哲学です。

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