やわらか頭の作り方 -よりよく”考える”には-
このまえあった勉強会で感じたことを以前ブログに挙げた。まだ見ていない方はこちらもぜひ。
今回はもう一つ感じたことを書くことにした。
勉強会の最中に
「ゲージ場の質量次元(mass dimension)っていくつでしたっけ?」
という(専門の人にとっては)何気ない質問がでた。この質問の意味を簡単に説明しておくと…
私たちが”モノ”を測る時に必ず必要なものが「単位」だ。単位には”重さ”を測るg (gram)や”長さ”を測るm (mass),”時間”を測るs (second)があるが、物理ではこういう単位を”次元”と呼ぶ。
”質量次元”というのは「いろんなモノ(=物理量)の単位を質量の次元で測りましょう」ということなのだ。
(さらに詳しく知りたい方は最後に例を挙げておいたのでみてみてください~)
また、ゲージ場というものは説明すると難しくなるが、よくわからなければ素粒子、それも”力を伝える素粒子”のことだと思ってもらえればいい。
いろいろわからないことは多いと思うが、とりあえず「ゲージ場なるものを質量の次元で測るとそれはいくらか」ということが質問に上がったのだ。すぐには答えがでず一旦保留にして次の質問に移っていった。
それを聞いて私はすぐさまゲージ場の従うLagrangianが
$$\mathscr{L}=\frac{1}{4}F_{\mu\nu}F^{\mu\nu}$$
で書け、場の強さ\(F_{\mu\nu}\)が\(\partial_{\mu}A_{nu}-\partial_{\nu}A_{\mu}\)で与えられることを使って
$$\mathscr{L}\sim\partial_{\mu}A_{\nu}\partial^{\nu}A^{\mu}$$
となることを見ると微分\(\partial\)質量次元は\(+1\)(質量の次元ということ)、Lagrangianの質量次元は4次元時空上で\(+4\)(質量の4乗の次元ということ)で書けることからゲージ場\(A^{\mu}\)の質量次元は\(+1\)であることを求めた。
「これを発表しよう!」と思っていた矢先。前のグループの方が先に答えを話してしまった。
それ自体はいいのだが、その人の答えの出し方はこうだった。
ゲージ場はそもそも”共変微分”というものと一緒に導入されるモノで、
$$D_{\mu}=\partial_{\mu}-ig\lambda A_{\mu}$$
という形をとる。これを見れば答えは一目瞭然。微分\(\partial\)と同じ次元を持っているのがゲージ場なのだからその質量次元は\(+1\)なのだ。なんの計算もいらなかったのだ。
これを通してやはり自分の頭はまだ固いな…と思った (- -;)
結局
それが”何のため”に、どういう”定義”で与えられているのか
を考えたら”もっとよく、もっと簡単に”できたのだ。
柔らかい頭、広い視点をGETするためにはやはり基礎が大事。
勉強だけではなく、何をするにしても基礎の中にはやはり多くの答えが入っているのだ。
意外と私たちは基本的で基礎的なことができてない、そのように私は生活の中でも思ったりする。
基本を大事にして”もっとよくできるように”努力すること、それが今のあなたの問題を解決する糸口になるかも。
本ブログは神様を信じている学生の物理ブログです。ぜひ他の記事も見てみてください~
補足)質量次元とは
素粒子分野ではよく光速の値を”基準にする”という意味で\(1\)にとる(これを自然単位系という)。
速さという量は(長さ)/(時間)という単位で測られるのでこれを\(1\)にとるということは長さの次元\([L]\)は時間の次元\([T]\)と同じ。
またエネルギーには\(E=mc^2\)という関係があり、いま\(c\)は\(1\)に取っているからエネルギーは質量と同じ次元になる。
さらに作用は無次元量なので\([S]=[E\cdot T]=[M\cdot T]=1\)となって時間の次元\([T]\)は質量次元では逆数、つまり\(-1\)になる。
結果をまとめると
$$[L]=[T]=[M^{-1}]$$
また質量の次元そのものを\([M]=+1\)とすると、
$$[L]=[T]=-1$$となる。上の記事内で\(+1\)だとか言っていたのはこういう意味である。
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素粒子物理学を研究しています。
物理学を「面白い学問」で終わらせないこと、そこから「人生のなかで核心となる精神」を学んで生きることが僕の哲学です。
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