Feynmanダイアグラムを描いてみた ーPart 1ー

日々思うこと

$$\def\bra#1{\mathinner{\left\langle{#1}\right|}}$$ $$\def\ket#1{\mathinner{\left|{#1}\right\rangle}}$$ $$\def\braket#1#2{\mathinner{\left\langle{#1}\middle|#2\right\rangle}}$$

いきなりだが、物理に興味のある方は”Feynmanダイアグラム”というワードを1回は聞いたことがあると思う。

ざっくりいうと”粒子の反応”をイラストにしたものであるが、

それを描いたところでどうするの?

と疑問が湧く人も少なくないはずだ。

そこでFeynmanダイアグラムはどういう背景があり、何のために描くのかを見ていきたいと思う。

 

まず私が本記事を書くにあたってベースにしているテキストを挙げておくと

SGCライブラリ144 基礎から学ぶファインマンダイアグラム 具体例から身につける計算手法

柏 太郎著 サイエンス社

である。本書は初めに量子力学の基礎を端的にまとめたうえでFeynman核、摂動論、Feynmanダイアグラムと順を追って書かれており、途中の計算のフォローは例題という形で与えられており実質行間はないと言ってもいいくらい読みやすい本でオススメ。

基礎知識がないままいきなり飛び込んでもフォローできると思うし、少しでも場の理論を知っていると計算だけでなく意味まで追って頭の整理ができると思うのでぜひ。

 

まず今回は序論として簡単な量子力学のまとめをするだけにして本格的な内容は次回から、ということにしよう。

まず量子力学において系の状態はHilbert空間上のベクトル\(\ket{\Psi}\)で表される。で、これに例えば位置演算子\(\boldsymbol{\hat{Q}}\)を対角化する基底\(\ket{\boldsymbol{x}}\)と組み合わせることで波動関数の”座標表示”$$\braket{\boldsymbol{x}}{\Psi}\equiv\Psi(\boldsymbol{x})$$とできる。このように本質的なのは状態ベクトル\(\ket{\Psi}\)であって\(\Psi(\boldsymbol{x})\)は1つの表現方法に過ぎない。

また位置の固有状態\(\ket{\Psi}\)は直交条件を以下のように満たしている。$$\braket{\boldsymbol{x}}{\boldsymbol{x’}}=\delta^{(3)}(\boldsymbol{x}-\boldsymbol{x’})$$離散的な状態であればKroneckerのデルタを使うが、状態\(\ket{\Psi}\)は連続的なparameterを持つ無限個の3次元ベクトルであるからここでは\(\delta\)関数に置き換わっている。

これに加えて\(\ket{\Psi}\)は完全系も以下のように成している。$$\int_{-\infty}^{+\infty} d^3x \ket{\boldsymbol{x}}\bra{\boldsymbol{x}}=\boldsymbol{1}$$

また以降、運動量固有状態と位置固有状態の内積もよく使われるので以下に挙げておく(証明はテキストにもあり有名なので省略)。$$\braket{\boldsymbol{x}}{\boldsymbol{p}}=\frac{1}{2\pi\hbar}exp\left[\frac{ipx}{\hbar}\right]$$これは座標表示から運動量表示へのFourier変換におけるweightとも見れる。これで状態そのものに関しては一旦終わり。

 

量子<力学>というからには系の時間発展を考えなければいけない。系の時間発展を記述するためのやり方は大きく3通りあり、ここではそのうちの2通りを紹介しておく。まず系のある時刻\(t_{0}\)での状態\(\ket{\Psi(t_{0})}\)が時刻\(t\)まで時間発展をするためにはユニタリ演算子(\(U^\dagger U=\boldsymbol{1}\)を満たす行列)を作用させればよい:$$\ket{\Psi(t)}=U(t,t_{0})\ket{\Psi(t_{0})}$$これは系内に存在している粒子の存在確率\(|\braket{\Psi}{\Psi}|^2\)が時間発展によって保存すべきであることからきている。

この時間発展演算子\(U(t+\Delta t,t)\)は具体的に$$U(t+\Delta t,t)\equiv\boldsymbol{1}-\frac{i\Delta t}{\hbar}\hat{H(t)}$$で与えられる。つまり状態の時間発展は\(\ket{\Psi(t)}=(\boldsymbol{1}-\frac{i\Delta t}{\hbar}\hat{H(t)})\ket{\Psi(t_{0})}\)となり、\(\Delta t→0\)の極限(無限小の時間発展)をとればScrödinger方程式$$i\hbar\frac{d}{dt}\ket{\Psi(t)}=\hat{H}(t)\ket{\Psi(t)}$$を得る。

時間発展演算子\(U(t,t_{0})\)は\(U(t_{2},t_{0})=U(t_{2},t_{1})U(t_{1},t_{0})  (t_{0}>t_{1}>t_{2})\)を満たすので無限小の時間発展演算子を繰り返し作用させると有限の時間発展演算子は指数関数の定義を用いて結局$$\begin{align}U(t,t_{0})&=\lim_{N \to 0}\left(\boldsymbol{1}-\frac{i\Delta t}{\hbar}\hat{H(t_{N-1})}\right)\dots \left(\boldsymbol{1}-\frac{i\Delta t}{\hbar}\hat{H(t_{0})}\right)\\ &=\lim_{N \to 0}\left(\boldsymbol{1}-\frac{i\Delta t}{\hbar}\hat{H(t)}\right)^N\\ &=exp\left[-\frac{iT}{\hbar}\hat H\right]          (T\equiv t-t_{0})\tag{1}\end{align}$$とできる。つまり状態は$$\ket{\Psi(t)}=exp\left[-\frac{iT}{\hbar}\hat H\right]\ket{\Psi(t_{0})}$$のように時間発展をする。

 

ここである物理量(演算子)\(\hat{O}\)のある時刻\(t\)での期待値は\(<\hat{O}(t)>\equiv\bra{\Psi(t)}\hat{O}\ket{\Psi(t)}\)で与えられることと上の(1)式を用いると時間発展を系の状態ではなく演算子のほうに押し付けることができる:$$\hat{O}_{H}(t)\equiv e^{+\frac{it}{\hbar}\hat{H}}\hat{O}e^{-\frac{it}{\hbar}\hat{H}}$$

このように状態は初期状態\(\ket{\Psi(t_{0})}\)のまま固定し演算子に時間発展を与える表現をHeisenberg Pictureと呼ぶ。一方で演算子は時間発展せず、状態が\(\ket{\Psi(t)}=U(t,t_{0})\ket{\Psi(t_{0})}\)のように時間発展する表現をSchrödinger Pictureと呼ぶ。両表現間で期待値が変わらないことからわかるように2つの描像は共に同じ物理を記述する。

Heisenberg Pictureでは時間発展するのが演算子であるため運動方程式は演算子に関する$$i\hbar\frac{d\hat{O}_{H}(t)}{dt}=\left[\hat{O}_{H}, \hat{H}\right]$$である。これをHeisenbergの運動方程式といい、Schrödinger方程式と等価であることもすぐに証明できる。

 

長くなってしまったが今回はここまでとする。簡単な内容のため今回はさらっと書いたが次回からは計算の流れも詳しく書こうと思っている。

 

本ブログは神様を信じている学生の物理日記(?)です。ぜひ他の記事もよんでみてください~  (^^)

Sedi

某大学M1 摂理の物理屋。 専門は素粒子物理学 よく変人と言われます(--)

プロフィール